■ NSA(National Security Agency,アメリカ国家安全保障局)

 現在の暗号の背景を語る上で NSA を避けて通るわけには行きません。

 NSA はアメリカの国家安全保障局のことで,その任務はアメリカ国家の安全を守るため世界のありとあらゆる通信を傍受・盗聴することです。そのために NSA は全世界のアメリカ軍基地に張り巡らせた 『エシュロン』 というネットワークを使い,ありとあらゆる通信を盗聴しています。日本では三沢基地にあるレーダーがエシュロン・レーダーだそうです。だとすると海底ケーブルは大丈夫なのでしょうか?。(と思っていたら2013年10月のニュースでNSAが海底ケーブルの盗聴していたことが明らかになって自分でもびっくりしました。このWebページを書いたのは1996年でしたから、17年後に私の危惧が本当だったことが分かったわけです)

 その活動は大韓航空機撃墜事件のときも,スクランブル発進したソ連の戦闘機と基地との交信を漏らさず傍受して,アメリカの情報収集能力の高さを示しましたし,1996年に発生したペルーの日本大使館公邸人質占拠事件でもアメリカは事前に特殊部隊突入を察知していたようですがこれも NSA のおかげでしょう(その後読んだ文献によると特殊部隊突入はアメリカの指導の元に行われたようなので,前言は撤回します。1998/11/23)。また,1995年の日米自動車交渉では現地の橋本通産大臣(当時)と日本の官僚とのやりとりを盗聴して交渉をアメリカに有利になるように進めたと言うことです。

 さて,それでは実際に NSA に行ってみましょう。URL は http://www.nsa.gov/ となっています。もちろん英語です。ここでは滅多にお目にかかれないような 暗号博物館 もあります。第二次世界大戦でドイツや日本が使用した有名な暗号機 『エニグマ』 が展示されています。エニグマの写真(ファイルサイズが 1.45MB もあるので注意)もあります。絶対に解読されることがないと思っていたエニグマが,実際には連合国側に解読されており,情報が筒抜けになっていたと言うのは周知の事実です。あの真珠湾攻撃ですら,アメリカ側は事前に察知していたにも関わらず,暗号を解読しているのを知られないため,あえて見過ごしたという強い疑念が指摘されています。つまり,開戦時点で日本の敗戦は決まっていたわけですね。


CIPHER による追記,2001/6/7

 当時のアメリカでは「何でよその国で行われている戦争(第二次世界大戦)にアメリカが参戦しなくてはいけないのか?」という風潮があったようです。アメリカ政府は事前に真珠湾攻撃を察知していたにも関わらず,戦争に参戦する口実として「太平洋艦隊とハワイ住民の尊い犠牲」というシナリオを実行したと信じている人は多いようです。

 真珠湾攻撃をきっかけとして,アメリカ国民は一気に参戦への風潮へと変貌しました。「アメリカ国民」と「日本軍部(政府?)」は,アメリカ政府に見事に填められた(はめられた)と考えている人は多いようです(確固とした証拠が発見されているわけではないようです)。


 NSA では任務遂行上の理由から暗号通信が行われるのを好ましく思っていません。そんなことをされると NSA の任務の遂行が円滑に行かなくなるからです。NSA には莫大な予算と多くのスーパーコンピュータ,有能な科学者・技術者を要していますが,それでも強力な RSA暗号を破ることは出来ません(現在輸出が許可されている 56bit DES 程度であれば NSA のスーパーコンピュータを持ってすれば解読可能と言われています)。そのためアメリカ政府は暗号の輸出に対して厳しい規制を設けています。そのためアメリカ企業は優れた暗号化技術を持っているにもかかわらず,アメリカ国外の企業と自由な取引が出来ません。


 インプレス社のインターネット・ウォッチ97年6月19号によると「97年6月19日にアメリカ RSA 社がやっていた暗号解読コンテストで 56bit DES が七万台のコンピュータと96日間の時間で解読されてしまった」そうです。詳しくは次をご覧下さい。


 そうこうしているうちにも という記事が入ってきました。


 何とか暗号化技術を我が手でコントロールしようと考えていたアメリカ政府ですが,政府によるコントロールに反対する人々や企業の抵抗にあい,最近(1997年春)では規制を若干緩めて『マスターキーをアメリカ政府に提出すれば,国外に暗号化技術を自由に輸出をすることを認める』という方針を打ち出しています(規制しようとしていることにかわりはありませんがね‥‥)。裁判所の司法判断などによって,アメリカ政府はマスターキーを使って暗号通信を解読することが出来るそうです(どこまで信用できることやら)。

 こういった現在の暗号関係のドロドロした話は次の書籍に詳細に書かれているのでご一読をお勧めします。素人でも非常に読みやすいです。

 ■ 書籍

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